【第5回】 日々、田舎のワイナリーで

甲斐ワイナリー
風間 聡一郎
8月頭、ヴェレゾン初期のメルロー

 8月。忙しさにかまけた結果、この原稿を書いている時点で8月が終わろうとしています。
 
着色期を迎えたブドウ達は、日々色付きを深め、ここ山梨ではブドウ園に色とりどりの房が下がり、緑の葉と青空のコントラストが美しい日々。既にデラウェアやピノ・ノワール、シャルドネ、早いところでは甲州やメルローも収穫がはじまっているようです。
 

収穫されたデラウェア

私のワイナリーでも農家さんのデラウェアが少しだけ入荷し、いまタンクで発酵中です。本格的に収穫や醸造がはじまるのは9月中旬くらいからですが、果汁の発酵する香りは心地よく、特にデラの香りはどことなく懐かしさも覚えます。

今年は例年より1週間から10日ほど生育が早い印象。収穫時期の見極めがとても難しい年になりそうです。しかし、ここまでのブドウの出来はとても良です。ビックヴィンテージだと期待をする人も多く、これはこれでなかなかプレッシャーが掛かります。足が震えます。

本格的な仕込み直前のこの時期は畑仕事も少し落ち着くのですが、それが逆にソワソワしてしまう要因で落ち着きがありません。もうちょっと早く計画していればいいものの、こんな醸造をやってみたい、こんなワインを造りたい、あんな遊び心を取り入れてみたい、設備が足りない、タンクもブドウも足りない、と思いつくまま思いついて白紙に戻す作業をするのがこの時期です。
 
来月は年間を通じて最も忙しくなる月。年々体力は落ちて行きますが、醸造技術は上がっていると思い込んで今年の仕込みに望みたいと思います。

9月の原稿書けなかったらごめんなさい。

著者について

甲斐ワイナリー
風間 聡一郎

伝統を活かしたワイン醸造を行う家族経営の甲斐ワイナリー3代目(酒造業としては7代目)。甲州種やメルロー、バルベーラなど専門品種を中心に個性と品位のあるワイン造りを目指し、日々、畑でワイナリーで作業に励む。時折息抜きにFBでぼやく。1978年生まれ。東京農業大学出身。