【北陸編・第2回】セイズ・ファーム

晴れていれば初夏でも雪をいだく立山連峰を望める。

ワイン雑誌以外でも「おとながゆったり楽しめるワイナリー」としてその世界観が数多く取り上げられているセイズ・ファーム。ラグジャリーな婦人誌や旅行雑誌でセイズの瀟洒なショップやギャラリーを目にした方も多いだろう。それゆえここではワイン造りに絞って紹介しよう。

木立に囲まれたワイナリーショップとレストラン。

セイズ・ファームは地元氷見漁港の仲買商「釣屋魚問屋」が港を離れ、富山湾ごしに立山連峰を望む山間の地に築いた。自分たちで育てたブドウで氷見の風土を感じされるワインを造り氷見の大地を次の世代につなげようと、2008年に畑を開き、11年にワイナリーを起こした。ここで働くのは氷見の人たちだ。山崎支配人は魚問屋からワイナリーにコンバートされたもともとは海の男だ。新潟のワイナリーで1年研修しブドウ栽培を学び、氷見では新潟の経験に地元農家の手法を加えてブドウを育てている。

画像最上部がワイナリーショップ、その右下がワイナリー、最下部は農器具庫と畑の事務所。

畑では早朝の魚市場での一仕事を終えた海の男たちが働く。港からワイナリーまで直線にすれば10キロメートルと離れていないが「海の人と山の人は違う、最初はなにを話しているかさえわからなかった。挨拶もしてもらえなかった」と山崎さん。少し気温が上がれば上半身裸で畑仕事をする海の男たちと、真夏でも長袖で作業する山の農家の人たち、当初は相容れなかった。だが中山間地の耕作放棄地を次々とブドウ畑に変えていくセイズの男たちの姿に、いつしか農家の人たちから挨拶の声がかけられるようになった。

醸造責任者は田向俊さん。横浜のレストランで働いていた田向さんは、故郷の氷見に戻り動き出したばかりのセイズに加わった。1シーズン、ヴィラデストで働き醸造の基礎を体得し、翌年は竣工したワイナリーで自ら責任者としてワインを造った。その後も意欲的に醸造技術を吸収し、セイズのワインは年を追うごとに氷見の風土を感じさせる個性が出るようになってきた。

コンパクトなワイナリーの内部。
ニュージーランドの醸造家たちと意見を交わす田向さん(中央)。

それはしなやかな果実味の中のミネラル感。ソーヴィニヨン・ブランの涼やかなハーブ風味の中にある硬質なミネラル感は富山湾に揚がる白身魚の旨みを引きだしてくれる。まだ日本では造るワイナリーの少ないアルバリーニョはセイズでも2016年が2年目のリリース。今年6月にニュージーランドから訪ねてきた同国のトップワイナリー、フェルトン・ロードとノイドルフの醸造家二人はこのアルバリーニョを絶賛。自らもアルバリーニョを造っているというノイドルフの造り手は、買って帰り仲間たちと勉強のために飲みたいといったほど。

ショップの一角は、地元アーティストの作品を中心に展示するギャラリー。
ワイナリーショップでは農産加工品や釣屋水産の加工品も扱う。

一度は訪ねて氷見の食に合わせてセイズのワインを飲み、氷見の風土を感じてみたい。ワイナリーにはレストランも併設されている。

紹介したワイナリー

住所:富山県氷見市余川字北山238