醸造家の本音トーク2022「栽培醸造家の心強い相棒」

日本ワイナリー協会主催 オンライン・トークレポート
醸造家の本音トーク2022「栽培醸造家の心強い相棒」

開催日:2022年12月17日(土)
【パネラー】 
山崎 太地 山崎ワイナリー                                 西畑 徹平  マンズワイン小諸ワイナリー
掛川 史人 カーブドッチワイナリー                     茂手木 大輔 本坊酒造マルス山梨ワイナリー
太田 直幸 広島三次ワイナリー                           古屋 浩二  安心院葡萄酒工房
【進行役】 
小林 弘憲 シャトーメルシャン椀子ワイナリー長

 小林弘憲  山崎太地  西畑徹平  茂手木大輔  掛川史人  太田直幸  古屋浩二

小林:.2022年はどのような年でしたか?
古屋:非常に暑い年。春先から例年よりも若干遅く萌芽し、梅雨の時期全く雨が降らず、遅れて梅雨がやってきた。台風は適度にやってきた。例年、台風は大分に直撃することは少ないが、今年は1つたいふうが直撃し、被覆栽培で用いるビニールが破ける被害がでるエリアがあった。畑全体としては、暑かった影響でBrixの伸びが抑えられた。例年に比べて夜温が下がりきらなかったことが理由と考えられる。暑い年であっても糖度が上がるプテマンサンは期待が持てる。
太田:今年は暑く、雨が極端に少ない印象が強かった。水が少ないので、熟度が進むかと思ったが、暑さのせいで進まなかった。スタートは良かったが、例年より遅れた。MBAは糖の蓄積が思ったより進んでいなかった。シャルドネは例年より少し早く収穫をした。台風は昨年よりは被害が少なかったが、一度屋根が飛ぶ強風の台風が来た。
掛川:非常に雨が多い年。春先から7月まではよい天気が続いていたが、8月~9月5日ごろまでずっと雨が続き、すごく大変だった。糖は伸びなかったが、酸が高かった。病果は一部出たが、非常に健全なブドウが収穫できた。現段階で悪い年ではなかった。例年より酸は高いが、それを生かしたスタイルを造れると期待している。アルバリーニョは気候の変動を受けない品種と考えている。ビンテージによって酸や糖pH等大きな変化が出ない特殊な品種。新潟でも海側の地域の雪は少ない。
茂手木:今年は病気や虫が少ない一年であった。天候は雨が少なく、空梅雨であった。その後も少雨で、果粒の張りが緩慢であった。シャルドネ、メルロー、シラーは非常にいい年であった。欧州系の晩熟なカベルネ、プテヴェルドは着色に苦しんだ。メルローやシャルドネは開花が一斉であったが、カベルネ、カベルネ・フラン、プテヴェルドは蕾のものもあれば、開花しているものもあり、開花バラバラであった。開花がばらついたことが、着色不良に影響が出た可能性がある。晩熟の欧州系は収穫のタイミングが難しかった。
小林:山梨の甲州の様子はいかがでしたか?
有賀(勝沼醸造):甲州は玉の張りが悪く、収穫量が多いところでは4割減、平均で3割少ない状況。おそらく6月の高温と少雨が原因と考える。果粒肥大一期の乾燥と35度以上の気温が続いたことが大きい影響を与えたのではないか。
西畑:自社管理畑と契約栽培畑で差が出た。春先の防除のタイミングがずれたところはベト病が発生し、収量が落ちた。半面、収量が落ちたため、良いブドウを収穫することができた。収量が多い畑では、色調の低下がみられた。糖度も高く、補糖の必要性もなかった。9月は雨が多く、大変であったが、10月は天気が良く、カベルネは良い出来の年であった。白ワインは比較的酸が残る年であったが、糖度は高すぎず、好ましい値であった。
小林:上田地域は8月下旬から9月は毎日のように雨が2,3時間降っていた。9月中下旬に収穫するシャルドネ等の品種は例年に比べ、糖度が1ポイントほど低かったが、10月からは雨が無くなり、カベルネ、カベルネフランはとても良い品質のブドウを収穫できた。
山崎:空知地方は夜に雨が降り、日中高温になる日がつづき、北海道にしては珍しく、ベト病に苦しめられた年となった。朝結露の状態が長く続き、例年通りにはいかなかった。収穫期は天候に恵まれ、各品種スケジュール通り収穫することができた。今年も空知らしい酸味を生かせるビンテージになりそう。今後は反収量を上げる工夫やそういった区画を造ることが、低収量の空知では大事になってくると考えている。今年珍しい出来事として、ブドウ畑に落雷があり、支柱に落ちた落雷が架線を通して、その列のブドウと木が全滅してしまった。空知の一般的な収量は反収500kg悪ければ250kgであるので、面積を増やして収量を確保しているが、今後は反収を増やす努力を進めていく。150cm間隔で植え付けをしている。

Q2.醸造家の心強い相棒は何ですか?
古屋:アグリノートというアプリケーション。自社畑の農薬や作業の管理をサポートしてくれる。作業日誌や農薬の管理を視覚的に行うことができる。農薬管理に対してのアラート機能がとても便利。生育の情報を画像で管理することや、作業者の作業状況などの管理もできる。年間費も安く、ペーパーで管理している方のデジタル化にはとてもおすすめ。
太田:ステンレス製の樽。100Lステンレス樽を補酒用のワインを入れて使っている。密閉性があり、持ちがよく、容量がちょうどいい。樽下の蛇口から、補酒をしていき、ヘッドスペースが大きくなるとビンに移し、使っている。輸入品が値上がりしているため、コロナ前と比べ、倍くらいに価格が変化している。無線機がとても便利、地下と外で作業をする場合など、コミュニケーションが取ることができ、5年の免許を取得し、使用している。大きい畑でのコミュニケーションにも便利。無線によっての指示出しが可能。
掛川:ステンレス樽は283Lのものも使っている。283Lで発酵をさせて225Lの樽に移す際に最適な容器である。
また、オリが落ちるのが速い。3000Lのタンクから283Lに移すと、1週間から10日くらいでオリが落ちる。製品を造るスピードを速めることができる。アルバリーニョを発酵させる際、通常の円筒型のタンクに比べ香りが出る。全面ステンレスなので、外気温の影響を受けやすいので、エアコンの聞く部屋で温度管理をしている。今後も導入を進めていく予定。発酵が終わった後にいかに満了貯蔵するかを考えており、タンクに入りきらないものはステンレス樽を使うことによって満了貯蔵を増やすことができる。仕込み中や熟成中にSO2を使用しない仕込み方をしているため、酸化、微生物汚染が怖いため、なるべくコンパクトにし、空気と触れる接地面を0に等しい状態まで落とすことができるメリットがある。樽型の貯酒タンクにはアルゴンを使っている。
小林:ほかにアルゴンガスを使っている方はいますか?
古屋:アルゴンガスは価格が高いため、密閉タンクなどは微圧管理でヘリウムガスを使用している。
茂手木:試験をしながら使用している段階。表層だけカバーすればよいのか、使用方法も検討中。補酒の管理には効果がありそう。
掛川:ロボモア(自動草刈り機)を5台使用している。補助金を使いながら導入をした。稼働面積は40アール位。2.5m畝間と1.5mの株間を10日くらいで刈尽くすことができる。5年くらいはしっかり動く。費用対効果が高い。ベースとなる充電ステーションを広げることで、0. 8ヘクタールまで広げることができる。平地で使用しているが、斜面でも使用できる。刃が大きく、1か月放置した畑でも、10日で刈尽くすため、草刈をする手間が全くかからない。植生や雨に対する雑草の水分競合は無くなってしまうため、使い方を考えながら行っている。24時間稼働してくれる。GPSは対応していないため。ルンバのような動き方をする。トラクターのような轍はつかない。草刈の範囲はロープを張り巡らせ、30cm埋設することで決めることができるが、このロープがトラクターなどによって、切れてしまうと補修が大変。電源が必要なところが難点である。
茂手木:斜面にワイナリーを建設することによってグラビティーフローを実行できる。デブルバージュをする際も2階部分のデブルバージュ用タンクから1回の発酵タンクにホースをつなぐだけで、行うことができる。作業者の負担、果汁に対する負荷の軽減につながる。仕込み量が多くなると、デブルバージュ用タンクがあることで、作業効率が高まる。デブルバージュ用タンクはオリと果汁の接地面の上にバルブを設けることにより、品質を保ち、歩留まりをよくする。白ワイン用の発酵タンクは酸化を防ぐため、液面の表面積を減らすため、のっぽにしており、赤ワイン醸し発酵用タンクは醸し発酵の抽出効率を高めるために、寸胴にしており、果汁と果皮の接地面積を増やすことにより、抽出を促そうとしている。醸し発酵後のカス出しのことを考えて、下にバットが入るようにタンクの足を長く設計した。作業効率が高まり、酸化も防ぐことができた。圧搾機は窒素置換ができる密閉型とオープン式の二つがあり、甲州などの香りを生かすタイプは密閉式を、味わいをしっかり出すタイプは酸素を絡ませて搾りたいのでオープン式を使い分けて使用している。
小林:他にグラビティーを使用している方はいますか?
山崎:ブドウの搬入口が2階で原料処理を2階で行い、果汁、ブドウを下に落とす形で行っている。発酵を行う1階部分のスペースに収穫箱やブドウについているゴミが落ちないところがグラビティーのメリットでもある。
西畑:フォークリフトをうまく使うことで、建物が対応していなくても、グラビティーを生み出し、使用することができる。ルモンタージュや白ワインの樽抜きも高さをつけることで、グラビティーができる。パッキン(ゴム)が付いた落し蓋を使うことで、ヘッドスペースが0になり、白ワインも赤ワインも管理がしやすくなっている。酢酸エチルのリスクを排除することができている。ゴム部分の管理が少し大変で、汚くならないように清掃している。卵の黄身がつぶれないといわれているチューブポンプを赤ワインの仕込みに使用している。オリは布製のコポフィルタを使用して濾過することで、きれいな果汁とオリをしっかり分けることができる。時間は1日くらいかかるが、電気も必要なくコストがかからない。布製なので、何度も洗って使用することができる。日本酒の濾布のようなもの。果汁を濾過する場合はペクチンが多いので濾過ヘルプ(ダイカライト)のようなものを使用するとうまくいく。果汁もワインもどちらも使用している。
太田:樽の貯蔵庫が地下にあり、タンク室が1階のため、タンクから樽に移す際はグラビティーフローとなる。
山崎:Europressの密閉式のプレス機。補助金をうまく使用することで、新しい設備を導入することができる。午前中収穫し、午後から、選果を行い、病果がない房はそのままホール型のプレス機のなかでブドウが沈む程度に少し圧搾し、一晩おいて翌朝プレスを行う。病果がある房は浸漬したくないので、小型のオープン式のプレス機を使用してすぐに圧搾を行う。当初はプレスに時間がかかり、搾汁率が悪く使いにくいと思っていたが、工夫やアイデアで良い効果を生むことができた。一晩浸漬することにより、果汁品質がかなり上がった。濁度は多くなるが、ガスを入れて浸漬することで、乳白色の酸化のない果汁を得ることができた。
小林:フェント社のトラクターは他の会社と比べてタイヤの間隔が狭いため、畝間2.5mの中にきっちり入り、馬力があるトラクターが便利。SSは噴口を改造することで、垣根式に対応している。キャビン付きのSはカッパを着用しないことが楽。AMOSの圧搾機は白ブドウの圧搾に使用する場合、密閉式の部分にジョイントを入れることでそのままタンクに送ることができる。PELLENC社の除梗機が振動式できれいな実を取り出すことができる。スピードは1時間に1. 5t程度。茎の熟度により、梗が取り切れないことがある。しなるような梗が理想。除梗破砕からタンクまでグラビティーで送り込んでいる。500L刻みで収穫量別に分けて使用している。チラーステーションを造り、移動式のタンクを用い、発酵管理中の温度コントロールを行っている。
小林:CO2を減らすなど、自然に優しいワイン造りを始めていますか?工夫はありますか?
山崎:ブドウ畑の隣接する畑に肥料作物(エン麦など)を育てている。堆肥化し、使用し始めているが、堆肥作りも難しく、試行錯誤を繰り返している。
西畑:より良い栽培方法を見つけるために、減農薬栽培と3割以上の畑は有機栽培を行っている。畑をたくさん作り、少しの収穫をすることは自然の破壊につながるのではないかと考えている。ある程度狙った量のブドウを収穫することが大切だと思う。ワイン業界だけではなく、地域の人たちもみんなで地球環境を考えて、取り組んでいくことができればいいと考えている。
茂手木:絞ったブドウかすを取引のある農家さんに引き取ってもらって堆肥化を行っている。スマートメーターという電力を把握するシステムを使用することで、設備を使用する時間をずらすことで電力の過剰な使用を抑えることができている。
掛川:ロボモアなどを使用し、トラクターを走らせる量を減らしたいと考えている。品種の選定が大事だと思う。農薬の散布が少なくて、量が取れていいブドウのずっと考えている。永続性を考えていく中では、地域の障碍者の方との連携に力を入れている。年間で3000人ほど手伝ってもらっている。収穫は90%お願いしている。今年は9月だけで、1000人ほど手伝っていただいた。最初の2年間は行政を一緒に行いその後は事業所に人手をまとめていただき、新潟市内の15くらいの事業者さんと一緒に行っている。4,5人のグループに必ず指導員の方がついてきてくれるので、コミュニケーションや指示出しもやりやすい。
太田:ブドウの残渣を飼料に使い、三次ワインビーフの商品化ができた。残渣を混ぜることで、お肉の質が上がったと牧場主からは高評価を得ている。畑は慣行農法と有機肥料を併用している。屋根をつけることで、農薬の量を減らすことができている。
古屋:高齢化で荒廃園になっている畑を集約して再整備し、畑を増やしている。農業の管理ではGAPを、製造ではFSSC22000を取得し、生産効率をあげる管理を外部の目線を取り入れながら行っている。エネルギーの削減につながっている。搾りかすの一部はブランデーにのこりは全量堆肥化している。
小林:畑の中に堆肥場を造り、3年かけて搾りかすを堆肥にしていく取り組みをしている。屋根は全て薄い貯留槽にたまり、それを農業用水に活用している。有休荒廃していく畑を再生していくことで日本の緑を取り戻すことにつながっている。 オリは何かに使用していますか?
西畑:堆肥に使用している。
太田:オリ処理用のクロスフローの導入を考えている。
茂手木:オリは全て回収して、オリの上澄みは味わいのアクセントとして使用することもある。
山崎:オリは地元の他の中小企業と連携し、食品加工や化粧品の開発を行っている。
古屋:オリはブランデーに使用している。
小林:今年のワインの出来具合と今後ワイン造りについてどう考えていますか?
山崎:ワイン造りはこれまで通り続けていくが、ワイナリーの作り出す利益は決して多くはなく、地域の飲食店、宿泊施設、観光産業としっかりと連携し、より多くの利益を地域で作り出せるようにしていきたい。
西畑:今年は葡萄の出来は収量を除けば例年よりやや良い年と言える。ブドウ栽培を難しくているのが気候変動の激しさで、集中豪雨や日照りなど厳しい天候の振り幅が大きくなってきていると感じる。そのような、環境に対応できるような行動をしていきたい。また、ただ美味しいだけ、コストパフォーマンスの良さだけを考えたワインではなく日本でなぜワイン造りをあえてしているのか、その理由を胸を張って言えるような造り手でありたい。
茂手木:今年の葡萄の出来は例年に比べて良好。甲州、MBAに関しては小粒なものが多く収量は落ちるがその分凝縮感があってワインの品質は良い。今後については栽培品種について考えていく必要を感じている。ワイナリーのある穂坂地区でもカベルネ・ソーヴィニヨン、メルローの着色に関して昔より難しくなってきている。テンプラリーニョやシラーなどに改植していく必要があるかもしれない。400tほど仕込んでいる葡萄の大部分は農家から仕入れているものであるため、継続して原料を供給するためには適した品種を選択する必要があると感じている。穂坂地区以外にも葡萄の栽培の適地を模索していく必要もある。また、山梨県はマスカットベーリーAと甲州は大きな存在であり、より力を入れていきたい。しかし、栽培農家数の減少、他品種への改植が進んでいる現状がある。5年10年後に甲州やマスカットベーリーAの品種の希少性が増しているかもしれない。それらの品種のワインに関しても技術を研鑽しブラッシュアップし、高付加価値をつけていきたい。
掛川:今年の出来は葡萄に関しては特別良い年ではないと感じている。だが、ワインに関して新しい挑戦をしたのでその結果が楽しみである。また、デラウェアに非常に注目しており、食用とされてきたキャンベルやスチューベンにも可能性を感じている。 中長期的に日本のワインのアイデンティティを模索していくことになると考えている。気候的に日本で今後ヴィニフェラを無理して造っていくのではなく、食用葡萄に向かっていくのではないかという考えもある。また、カーブドッチは観光ワイナリーであり、製品の7~8割をワイナリーの直販で販売している。お客様はワイナリーに脚を運んでくださる方が非常に多く、そのような層が求めるワインはただ美味しいだけではなくもう一歩踏み込んだものが必要だと考えている。グローバルスタンダードに拘らず、その土地の特徴、メッセージ性の強いワインを造っていかなければならない。
太田:今年の葡萄は品種によって出来不出来に差があった。ここ数年天候不順は常態化しており、それにどれだけ対応できるかが大事。新たな品種の選定も考えている。今後も継続してワイン造りをしていくには、ワインが美味しいのは当然として中身の価値が製品の価格と見合っているか、美味しいと思ってもらったワインをまたリピートしてもらえるようなワイン、価格を超える品質をめざしていく。それが事業を継続していくために大事だと考える。また、葡萄の残渣を利用したチーズやビールが造りにも関わっており、そのようなワインと違う業態の企業とのコラボによって地元を盛り上げていけたらと考えている。
古屋:2010年に農業法人を立ち上げて2011年から自社圃場の拡張を続けてきた。現状18haまで広がった。他のワイナリーの方も言っていたが昨今、国内では様々なブドウ品種への挑戦がされていて、栽培、定着させていくようなサポートも出来たらと考えている。JVA(日本ワイン葡萄栽培協会)を通して多くの苗木の栽培、クローンの試験、その試験結果の公表を行っている。また、スパークリングワインにより力をいれること。海外の評価をより得られるような活動をして日本ワインの世界での立ち位置を確立するための助力ができればと考えている。

【新しい仲間(新規ワイナリー)の紹介】
● 7C(セブンシダーズ)ワイナリー
パネラー:鷹野 ひろ子(7Cワイナリー 栽培醸造責任者)
2022年の醸造から始動した富士河口湖町で初めてのワイナリー。
年間製造本数3万本を見込む。
町内に1haの自社圃場、県内に13件の契約農家。
富士河口湖町は標高850mの冷涼すぎる気候であるためブドウ栽培には不向きとされてきたが昨今の温暖化の影響でブドウ栽培が十分に行える環境になった。
土地や気候にあった品種選びはこれから試行していき、この地域のテロワールの表現を目指す。
また、栽培者ごとの葡萄の品質にあったワイン製法を追求し、全ての製品に栽培者、葡萄品種、セパージュとその比率を明記し、ワインの素性を明確に表記する。
自社管理圃場ではシャルドネ、メルロー、プテヴェルド、ソーヴィニヨン・ブラン、プテマンサン、少量のケルナーを栽培。来期はピノ・ノワールも予定している。
最初は白系品種を多めに扱い、様子を見ながら赤も増やしていく予定。
醸造所は少ロット生産向けに小さなタンクを多く用意し、少ないスタッフでも作業がしやすい設備を選定している。


● ドメーヌ・ヒロキ
パネラー:横山弘樹(ドメーヌヒロキ 代表取締役)
2020年に長野県北安曇郡池田町に解説されたワイナリー。
年間の製造本数は15000本を見込む。
元は2009年から他ワイナリーの契約栽培農家としてブドウ栽培を開始。
現在は5haの圃場を管理し、自社ワイナリー用と他ワイナリーに出荷用の葡萄、どちらも並行して栽培している。
栽培品種はシャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン。試験的にプテヴェルドとカベルネ・フラン。契約農家から龍眼も購入している。
池田町は30年以上ソーヴィニヨン・ブランの栽培が行われている地域で同品種のワインの評価も高く、特に力を入れている品種。赤で力をいれているのはメルロー。
ワイナリー周辺は北アルプスを拝む景観の良さ、水はけの良い斜面、西日の強く当たることが特徴。醸造用タンクは500L~2000Lの小型のタンクを利用。
10年以上契約栽培を続けてきた強みを活かし、今後も高品質の葡萄の栽培にとにかくこだわっていく。
 

 ● Cave an
パネラー:安蔵正子(代表兼wine grower)
 2021年山梨県山梨市 万力地区に設立。山梨市は令和2年にワイン特区として認定。
2022年、丸藤葡萄酒工業を退職、醸造免許取得。
自社管理圃場は今後植栽予定も含め約1ha。
栽培品種はタナ、シラー、プテヴェルド、メルロー、アルバリーニョ、甲州、今後はマルスランも。
特に力をいれている品種はプテマンサンとタナ。盆地の暑い気候に適した、糖度、酸、色の面で強みがあると考えている。
 醸造所は1番大きくても2klのタンクでそれ以下の大きさのものがほとんど。
今後数年で安定して1万本程度の生産ができるようにしていく。
栽培の面で育てやすくワインとしての品質も期待できるものに注力していく。